漫画『はだしのゲン』をスリランカの公用語“シンハラ語”に翻訳したのは、タランガッレー・ソーマシリ師(Ven.Thalangalle Somasiri)。日本の知人からこの漫画を紹介されたソーマシリ師は、当時の広島での戦争の悲惨さに涙を流しながら、一気に読みきった。「内戦が終わり、まだその傷が癒えないスリランカの子供たちに、平和の大切さ、ゲンのようなたくましさ、生き抜く力を紹介したい」と翻訳し、自費出版するこを決めた。
同師は、現在コロンボ郊外の「平和寺」の住職。頻繁に蘭華寺(千葉県佐原市)へ来日し、在日スリランカ人へ仏教の布教活動を行なっている。1990年代に大正大学などに留学経験があり日本語が堪能。公用語のシンハラ語-日本語の辞書の編纂者でもあり、日本語-シンハラ語の第一人者である。
同師の寺「平和寺」(コロンボ郊外)では、26年間続いた内戦等の影響で孤児になった子供たち35名が寝起きを共にしており、この子供たちに最初に「はだしのゲン」を読んでほしいと思ったそうだ。知人を通じ、原作者故・中沢啓次氏の妻・ミサヨさんの許可を得た。ミサヨさんも、内戦の傷がまだ癒えない子供たちがいるスリランカで出版されることをたいへん喜んでくれたという。海外翻訳は、今回のスリランカで23カ国目の翻訳となる。
今回、ソーマシリ師は、第1,2巻を各1000部を自費出版した。コロンボの書店他で販売するほか、図書館や学校にも寄贈するという。第3巻の出版も今年6月に計画中だ。
●出版に関するお問合わせ・ソーマシリ師への寄付に関しては、
⇒蘭華寺(千葉県佐原市)まで;T/0478-56-1394
作者・中沢啓治。1973年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載開始。作者自ら広島での被爆体験を漫画化し、戦中戦後の広島をゲン少年が幾多の苦難を乗り越え、たくましく生きていくストーリーだ。一時、松江市教育委員会が「一部描写が過激だ」などとし市立小中学校での閲覧制限を制限するという問題が起きたが、後に撤回された。作品は、全10巻。